きんとうか プレイ感想
GRISEDGEさんから2017年3月17日に発売された「きんとうか」、発売されてすぐプレイしましたが、主人公颯太くんの不思議ちゃんな性格と高めの喘ぎに若干辟易しつつ、シナリオも長いのでたぶん攻略するのに3週間ぐらいはかかったと思います。
そして、攻略後しばらくは放心状態になるぐらいの喪失感に襲われました。
最後まで終えて「こ・・・こんな結末があって良いのか・・・!!!」と涙拭きのタオルを握りしめながらさらにおいおいと泣きました。ボブゲでここまで泣いたのは初めてです。2週目はもう序盤から涙が自動的に出てくるので、泣きたいときにはきんとうかをやるとすぐに泣けます。自動涙製造機。
主人公の颯太君が、祖母の葬儀のため父親の故郷の島に帰るところから話が始まります。蝉の声をBGMに島での思い出と写真が回想で入りますが、このノスタルジックさになんだか既に心がやられそうです。そして開始早々明かされた颯太君の激重半生に驚きながらプレイすることになります。もう辛い。
【プレイ順】
宗定→愁→恭→司
以下登場人物とネタバレありルート感想です。
主人公/鈴村颯太(CV:古河徹人)
職業カメラマンのきれいな都会のお兄さん。
気の毒な体質を持っていて、プレイ開始10分ぐらいで、道端で急に喘ぎだしたから悪霊にでも憑りつかれたのかと思い焦りました。それもこの特異体質のせいなんですが、詳しいことは宗定さんが解説してくれます。
颯太君の過去の彼女からは「重いのか軽いのか分からない」と言われたことがあるそうですが、間違いなく重い。自己評価は「恋をするとのめり込むタイプ」らしいです。両親のことや親戚のことで中々辛い過去を抱えており、始まったら必ず終わりがくるから、終わって欲しくないものは始めない、との持論展開に司もびっくり。
島で暮らしていたおばあちゃんが亡くなり、葬儀のために帰ってきた颯太君は、島での不思議な現象に巻き込まれます。登場人物みんなが関わってきて、特に2週目をプレイしていく内にああそうかだからこのときこの人は・・・と背景が分かってジーンと来ます。
色々と大変なこともあったけど、颯太君が出会ってきた人の中で全員が悪い人たちばかりではなく、引き取られて行った先の家の女の子だったり、その後に育ててくれた人だったり、もちろん島で会った人達も含めて、親切にしてくれたり救ってくれる人もいたんですよね。だからこそ気持ちに敏感で優しくて、手を差し入れたくなるような隙間があって島の当主2人や健全な若者がぎゅぎゅっと惹かれてしまったんですね。
逢己宗定(CV:波夏至岩亜鉈)
逢己家のご当主。島では一番偉いお方。解説担当。
CVハゲシイワアナタと読むって知ったときは笑いました。
ハッピーエンドに進んでるはずなのに、これ、大丈夫なの? 絶対修羅の道に進んでるよね? ほんとに大丈夫? と疑わずにはいられないぐらいの宗定さんの突っ走り具合。
暴走&暴君の極みで恋路を邪魔するものは人でも容赦なく轢く。
島のお偉い方ゆえに、一般人の颯太君と恋に落ちようもんなら数々の弊害が生じます。
颯太君が「夏の間だけでいいから・・・秘密にするから・・・」なんて言って禁断の恋を始めてしまいますが、大抵そんな始まりの恋って悲恋まっしぐらなイメージなので、
バッドエンド直行ですか?と思わずにはいられない。
案の定、宗定さんとの逢引を浅倉さんに見られてしまいますが、マウスをクリックする手が震えたのは後にも先にもこのシーンだけです。
翌日浅倉さんが青白い顔して包丁持ってきたときにはリアルに「ヒェッ」と声が出ましたから・・・。駆け落ちしようにもできませんねこれじゃぁ・・・。
ラストでは、逢己の当主は島から出られないという掟を改革し、東京に戻った颯太君に会いに来てくれますが、閉鎖されていた独自の風習をどうやって改革したのかは見事に端折られています。ただ、後世に続く人たちにとっても宗定が変えたものは大きいんじゃないかな~って思いました。
あと潮は後で体育館裏な。
渡利愁(CV:やじまのぼる)
渡利のご当主。見た目立ち振る舞いから感じるイメージとは違って、
優しかったり可愛かったりからかったりとそれは好きになりますわ。
島の葬祭関係の仕事を一手に引き受ける、宗定とはまた違ったものを背負っているお兄さん。一人が好きなようでいて本当は人と繋がって求められたいし、人を愛したいし、家族、弟の事がとても大事。
颯太とは序盤、斎主と喪主の関係で関わっていきますが、
クイズ形式の選択肢で「おや? なんだこのユーモアのあるお方は・・・」と早々にギャップ萌えしてました。路夫さん曰くサイレントキラー。
相手に散々気を持たせといて牽制してきたり、かと思えばあっさり手出してきたり、翻弄される颯太君。思わずプレイヤーもドキドキしてしまう始末。絶対好きでしょ?って感じさせるのになんだか曲がりくねっているいけずなイケメン。
ただ、スピリチュアルなことを信じていないのに、身体では強く影響を受ける体質なところとか、幼少期の神隠し事件や司の事もあって、曲がらずにはいられない経験をしてるよなぁと思ったりしました。
司ルートでようやく「ありがとう」って言えたあのシーン、子供のころからずっとずっと司に言いたかった言葉が、もう一生言えないと思っていた言葉が、直接伝えられて本当に良かったと思います。
渡利恭(CV:須賀紀哉)
愁さんの弟で健康的な若者。
正論をまっすぐぶつけることが、たまに相手に大きなダメージを与えるということに気付かない。
そこが恭のいいところでもあるんですが・・・。
終わりが必ず来ると悲観する颯太に、「アウトロは来ない」と名言を放ちました。それに対して颯太が何と返したかというと、「君の後ろに流れる音楽は蛍の光だった」・・・。
笑うところで良いんですよね、愁さん。
恭ルートでは司に関しての真相は教えてもらえません。何も知らないから颯太に必死に司という友達の事を思い出させようとしますが、年上組2人に阻まれてしまいます。
宗定、愁ルートを終えた後だと、余計に辛いですね。
恭の猛烈アタックにより颯太とお付き合いすることになった後が、まぁ~いちゃこらいちゃこらしやがって、若さか・・・と遠い目をしながらプレイしてました。
バッドエンドでは「アウトロは来ないって言ってたのに!?」と詰め寄りたくなる部分もありましたがまぁ若者の機微は分からん(颯太談)
素直になってお兄ちゃんと仲良くしてほしいな。
司(CV:ワッショイ太郎)
優しくて誠実で達観し過ぎなお兄さん。
チャラそうな見た目にも色々理由があり・・・。きんとうかの真相ルートです。
24歳にしてここまで悟りを開いている人を見たことがありません。
きんとうかの野原で出会ってその日のうちに家に上げてしばらく同居して河原で告白して付き合って・・・この怒涛の「運命の人」感。それには理由があり、宗定さんが解説してくれます。
それにしても、颯太と恋愛関係になるまでの葛藤が「あ~!!」ってなるぐらい悶えました。やだもうカッコイイ。
そこから先に待ち受ける結末を想像するとめちゃくちゃ鬱になったんですが、ここは司、閉鎖された島で寂しさを抱える子供たちが犯してしまった最大の禁忌を、「2度目の人生ラッキーだったよ!ありがとう!」って笑顔で言ってくれる人でした。
ついでに冥途の土産って言って、島の人達に、あの世に帰ったら、亡くなった人に伝えたいこと伝言しとくよ!って・・・。
自分・・・涙いいっすか?
そしてきんとうかの花に埋もれながらお別れをするシーンで、頭が痛くなるぐらい泣いたのに、颯太が家に帰ってきて思い出として撮った写真をふと見たら、写真から司だけが消えていくという最後の追い打ち。
ちょっと待って。ここまでする? プレイヤーもう涙すら出ない・・・。
涙も枯れ果て、全てが終わったあとの海辺のシーン。颯太の「笑って~」の声に振り向いて「笑ってるよ、いつも」と笑顔を見せる司のスチルのところは、ほぼ放心状態で見ていました。この頃にはゴミ箱のティッシュの量が大変なことに・・・。
司が過去の話をしている時に、人を幸せにしたかった、幸せになりたかった、って言っていましたが、ひと夏でも、颯太君と司はお互いに幸せだったと思いますし、ゆっくりとお別れをすることで、悲しみだけが残るラストにならずに良かったと思いました。
〇そのほか
ところで地味に気になっているのが以下の3つ。
・渡利洋介先生の遠距離恋愛エピソード
・渡利 ゆかり・さゆりちゃんの前世(?)
・先々代逢己当主VSおじいちゃんの横恋慕エピソード
このサブ的な話もほうほう・・・と想像できて楽しいです。
洋介先生に関してはもうちょっと詳しく伺いたい。
きんとうかのシナリオは司ルートが本筋になるかと思いますが、ファンディスクやドラマCDでその後の話をやるとしても、司と既に本編でお別れしちゃってるので、もうこれ以降、颯太と司が会話したり触れ合ったりすることは無いんですよね。
こんな最後って・・・!とまた冒頭に戻りますが、こればっかりはもうどうしようもない。夏の終わりに余韻を残してくれた切なくて優しいゲームでした。